こども(乳歯列期・混合歯列期)の矯正治療

こどもの矯正治療は、いつから始めたらよいのか?こどもの矯正には、どんな治療が必要なのか?と悩まれるご両親も多いようです。

目的は大人の歯が全てはえ揃ったとき、正しいかみ合わせを作ること

こどもの矯正治療の目的イメージ

こどもの矯正治療の目的は、大人の歯が全てはえ揃ったとき、正しいかみ合わせを作ることです。家を建てるときに基礎工事が大切なのと同様、こどもの矯正治療は、いわば土台作りのようなものです。歯は、顎(あご)や歯槽骨(しそうこつ)という土台の上はえてきますが、その顎(あご)や歯槽骨の大きさや位置に不正があると、正しいかみ合わせを確立できないことがあります。大人の歯がはえ揃ったとき、健康で美しいかみ合わせになるためには、土台をきちんと作っておく必要があります。

お子さんの矯正治療は、治療の開始時期が大切です

治療を開始する時期は、長期的な目線で、最適な時期に始めることが大切です。適切な開始時期とは、お子さんの顎(あご)や歯並びの状態、骨の成長などに加え、本人が歯並びをどのくらい気にしているか、なども加味して決めていきます。

矯正を専門とする歯科医によるこどもの矯正治療は、「歯の生え変わり」を目安に第一期治療(乳歯列・混合歯列・永久歯列始め)、第二期治療(永久歯列)という二段階に分けて行います。

お子さんの矯正治療の流れ

お子さんの矯正治療の流れチャート図

第一期治療:こどもの歯が、残っている時期(乳歯列期・混合歯列期)

顔や顎(あご)の成長が盛んな時期に、上下の顎(あご)のバランスを整えたり不正な位置にある歯を部分的に直す治療

第二期治療:おとなの歯が、はえ揃った時期(永久歯列)

歯と顎(あご)の不調和がはっきりする時期に、歯並びの不正を直す治療

第一期治療(こどもの矯正治療)から行うと、

  • 不正咬合がこれ以上悪くならない可能性が高まる
  • 大人の矯正治療(永久歯列期の治療)が必要なくなる場合がある、または、必要であっても簡単な治療で済む場合があります

しかし、顎(あご)や顔の成長は、個人差が大きく予測できないこともあるため、こどもの矯正治療を行ったからといって、必ずしも第二期治療(大人の歯の矯正治療)をしなくても済むというわけではありません。また、歯列のでこぼこ(叢生)だけが問題となる場合、第一期治療を必要としない場合もあります。お子様の矯正治療は、顔や顎(あご)の成長がおさまる(18~20歳)頃まで見計らった長期的な視点で開始時期を考慮する必要があります。

お子様の歯並びやかみ合わせが気になる場合には、小学校入学前(6~7歳頃)に一度、専門の矯正医にご相談することをおすすめします。

お子さんの矯正治療の進め方

矯正初診(矯正医との相談)

※一般歯科医、小児歯科医からご紹介される場合があります。

お子さんによって歯並びの状態は異なります。
こどもの矯正治療は、お子さんご本人、保護者の方、矯正医の三者が一体となって行わないと成功しません。保護者の方がお子さんの歯並びの問題を正しく認識し、矯正治療の目的をしっかり把握した上で治療を開始するために、どうぞ歯並びの悩みや、治療に関する疑問を何でもご相談ください。

精密検査

大人の歯が不足している(先天欠損歯)、余分な歯が埋まっている(過剰歯)、将来萌出できない歯がある(埋伏歯)など、子どもの歯列は、見た目からはわからない問題が隠れていることがあります。安全な矯正治療を行うために下記の検査を行い、歯や顎、お顔の状態を細かく調べます。一般歯科医・小児歯科医が行う矯正治療の検査よりも詳細に行います。

  • 顔とお口の写真
  • 頭部X線規格写真(顎の大きさや位置、歯の向きなどを調べます)
  • パノラマX線写真(歯の本数や生え変わりなどを調べます)などの撮影
  • 口腔模型の型取り
  • 必要に応じて、手のレントゲン写真(骨の成熟度を調べます)等も撮影

診断

検査結果にもとづいて、お子さんにとっての最適な治療開始時期、期間、費用、最善の治療方針をご提案いたします。第二期治療(永久歯列期の治療)の必要性についても説明いたします。お口の歯磨きの状態によっては、装置をつける前に、むし歯の治療、歯ブラシ指導を優先する場合があります。

第一期(乳歯列・混合歯列)治療の開始と調整

お子さんの不正咬合に応じた矯正装置を装着いたします。
その後、1~2ヶ月に1回程度、装置の調整を行っていきます。

保定装置の装着と観察

矯正治療後の歯並びを安定させるため、保定装置を使用します。
永久歯列が完成するまで、数ヶ月に一回程度、歯の生え変わりの観察を行っていきます。

色々なお子さんの歯並び

お子さんによって、歯並びやかみ合わせの状態は異なります。お子さんがどのような歯列不正なのか、保護者の方が把握しておくことは大切です。

歯のでこぼこ(叢生)

歯列にでこぼこ画像

あごと歯のバランスが悪い、乳歯が早く抜けて奥歯がずれている、頬と舌の筋力のバランスが崩れているなどが原因で、歯列にでこぼこがある状態です。でこぼこの程度や原因によって、治療の開始時期、治療方法が異なります。でこぼこが著しい場合には、抜歯治療を含めた第二期治療(おとなの歯の治療)で直すこともあります。

出っ歯(上顎前突)

出っ歯(上顎前突)画像

上の前歯が大きく出ている状態です。前歯を打ってしまう危険があります。
上あごの成長が旺盛で、上の前歯が傾斜して出っ歯になる場合と、下あごの成長が弱くて出っ歯に見える場合があります。

受け口(反対咬合)

乳歯列(こどもの歯)の反対咬合画像
乳歯列(こどもの歯)の反対咬合
混合歯列(こどもの歯と大人の歯が混在)の反対咬合画像
混合歯列(こどもの歯と大人の歯が混在)の
反対咬合

前歯が反対に咬んでいる状態です。舌が低い位置にある場合や、上あごの成長が弱い場合、下あごの成長が旺盛なことなどが原因にあります。

こどもの矯正治療Q&A

矯正をするとむし歯になりやすくなりますか?

矯正装置が入ると歯みがきがしにくくなります。小学生までは上手に歯みがきができない場合がありますので、保護者の方の仕上げ磨きがとても重要になってきます。また、中学生になると勉強や部活などで忙しくなり歯磨きが行き届かない場合があります。毎日の食生活や生活習慣は、むし歯や歯肉炎の発生に深く関与します。矯正治療中はクリーニング、歯ブラシの使い方、食生活の指導なども随時行いますが、ホームケアをしっかり行うことが大切です。

子どもの矯正をすれば、大人になってから矯正治療をせずにすみますか?

こどもの矯正治療の目的は、大人の歯がそろった時に正しく咬むように環境を整えることです。こどもの矯正治療だけですむ場合もありますが、多くの場合、大人の矯正治療(第二期治療)が必要になります。ただ、こどもの矯正治療で顎(あご)や歯に関する複雑な問題を解決しておくと、おとなの矯正治療が簡単なものになり治療期間も短くてすむ場合があります。

治療期間はどのくらいですか?

こどもの矯正治療(第一期治療)では、顎(あご)や歯並びの問題の程度により治療期間は変わってきます。通常、第一期治療で装置をつけている期間は1〜2年程度です。ただ最終的な目標は、大人の歯(永久歯)できちんと咬むことなので第二期治療の治療期間も含めて、本人の負担が少なくなるように治療期間を配慮していきます。

*ご不明な点は矯正の担当医にご相談ください。

大人(永久歯列期)の矯正治療

矯正は子供のうちに・・・という意識があるようですが、大人でも可能です。
歯は、顔の一部です。歯並びは、口元とお顔全体の印象にも影響するため、悩みをお持ちの方は意外と多いものです。一昔前までは「矯正装置は目立つ、痛い・・」といわれてきたため、矯正治療をあきらめていた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし最近は使用される装置も改良され、患者さんの歯並びに対する意識も高まり、幅広く行われるようになりました。また矯正治療は、大人になってからでも、けっして遅くありません。少しでも気になることがありましたら、専門の矯正医にぜひ一度相談されてみてはいかがでしょうか。

矯正治療の進め方

矯正医による初診相談

患者さんひとりひとり歯並びの悩みは異なります。
ご自分の歯並びの問題を認識し、矯正治療の目的をしっかり把握した上で治療を開始いたします。どうぞお気軽に歯並びの悩みや、治療に関する疑問をご相談ください。

精密検査

安全な矯正治療を行うために下記の検査を行い、歯や顎(あご)、お顔の状態を細かく調べます。

顔とお口の写真
顔とお口の写真
顔とお口の写真
顔とお口の写真
顔とお口の写真
頭部X線規格写真(顎の大きさや位置、歯の向きなどを調べます)

パノラマX線写真(歯のレントゲン撮影)などの撮影を行います。

パノラマX線写真
パノラマX線写真

診断

検査結果にもとづいて、治療方針、期間、費用について等、詳細に説明いたします。お口の状態によっては、装置をつける前に、むし歯や歯周病治療、歯ブラシ指導を行う場合があります。

矯正治療の開始

矯正装置を1~2回に分けて装着します。その後、月に1回程度、装置の調整を行います。
矯正治療は、歯の移動の早さ、歯並びの不正の程度、抜歯するかしないか、治療方針などによって期間は異なりますが、通常1~3年ほどかかります。

保定装置

矯正治療後の歯並びを安定させるため、保定装置を使用します。数ヶ月に1回程度、来院いただき歯並びの状態を確認します。通常、保定期間は2~3年にわたります。

大人(永久歯列期)の矯正治療で使用する主な装置

マルチブラケット装置

セラミックブラケット
メリット

従来から使用されているマルチブラケット装置です。歯の色調との相性も良く目立ちにくい装置です。
症例の難易度によって使用が制限されることはありません。

デメリット

歯に装置を接着するため、見た目、歯磨きが難しい、外れてしまう等の欠点があります。
ワイヤーを結紮(けっさつ)する必要があるため、調整に時間がかかります。

マウスピース型矯正装置

インビザライン
メリット
  • 目立たない
    マウスピース自体が無色透明で目立たないため、周囲に気づかれることがほとんどありません。従来のワイヤー矯正とは違って口元が盛り上がることもないため、見た目も悪くならず、見た目を気にするストレスがありません。
  • 取り外せる
    マウスピース型の装置は、食事と歯磨きの時には外していただきますので、矯正をすることによる不便さを感じません。従来通りに外食でも気にせず好きなものを食べていただくことができ、歯磨きもこれまで通りです。生活スタイルによっては、就寝中のみマウスピースを装着するという治療方法も可能です。
  • 痛みが少ない
    ワイヤー矯正のように金属を使いませんので、口腔内を傷つけることもなく、わずらわしい口内炎の心配もありません。
    また、歯を動かすと痛みが出ますが、インビザラインでは痛みが出にくいような動かし方をしますので、治療中の痛みも少なめです。
  • 清潔に保ちやすい
    取り外し可能なマウスピース型の装置ですので、歯磨きは従来通りに行うことができ、虫歯や歯周病のリスクを高めません。また、約1週間ごとに新しいマウスピースに順次交換しますので、細菌が繁殖する心配もなく、常に清潔を保てます。
  • 金属アレルギーの心配がない
    インビザラインのマウスピースは体に無害な医療用プラスチックを使用しています。金属は一切使用しておりませんので、金属アレルギーがある方でも安心して治療を進めていくことができます。
デメリット
  • 装着時間を守らなければいけない。
    インビザラインは取り外しができる点がメリットですが、それがデメリットにもなり得ます。ワイヤー矯正の場合には、装置が歯に固定されますので、放置していても歯は動いていきますが、マウスピースの場合には、ご自分で管理して、きちんと決められた時間通り装着する必要があります。もしそれができない場合、思うように結果が出ない場合があります。
  • インビザラインイメージ
  • インビザラインイメージ
認定書

当院Dr.⽩井良周がインビザライン社よりインビザラインプラチナエリートステータ スドクターに認定されました。

症例写真

準備中

大人の矯正治療Q&A

子どもの頃から歯並びにコンプレックスを持っていましたが、矯正治療の機会を逃してしまいました。
子育ても一段落したので矯正治療を始めたいのですが、今からでは遅いでしょうか?

基本的には、どんな年齢においても矯正治療を行うことは可能です。ただむし歯や歯周病がある場合には、これらの治療を優先しなければなりません。また、上下顎の不正の程度が大きい場合には、外科手術を伴う矯正治療が必要になることがあります。さらに、顎関節の状態によっては、治療をお勧めしない場合や、慎重に矯正治療を行うこともあります。

歯周病等で失った歯がある場合には、矯正治療を行うことで、インプラント治療や入れ歯の治療が有利になる場合があります。その際は、一般歯科医と連携しながら矯正治療を行います。

大人の矯正治療の場合、歯が並ぶ土台となる顎(あご)の成長は見込めないため、歯を移動して正しいかみ合わせを作っていきます。大人の方は、歯並びに対する意識も高いので、矯正治療に積極的にのぞまれ良好な結果をもたらすことが多いようです。矯正治療が可能か一度ご相談されてみてはいかがでしょう。

矯正治療は健康な歯を抜かなければいけないと思っていましたが、最近は抜かない矯正治療があると聞いています。出来れば健康な歯を抜かずに矯正治療はできないでしょうか?

健康な歯を何本も抜くことには抵抗がある方も多いと思います。しかし、歯を抜くには矯正学的な理由があります。

  • 顎(あご)と歯の大きさに不調和があり、でこぼこ(叢生)が大きい場合
  • 前歯や奥歯のかみ合わせの不正が大きい場合
  • 口元が突出している場合

などです。

このような問題を解決するために抜歯が必要になります。無理に歯を並べた場合、口元が突出したり、治療後に後戻りがおきやすくなることがあります。

歯を抜かずに矯正治療ができる方は、こういった問題を残さずに歯を並べることができる場合です。このように抜歯するか否かの判断には、精密な検査が必要なことは言うまでもなく、十分な矯正治療の知識と経験が必要です。抜歯せずに矯正治療を開始した場合でも、治療途中で抜歯が必要と判断される場合には、治療方針を変更する場合があります。

抜歯する場合でも、きれいで安定した歯並びを作るために、患者さんによって抜歯する本数や部位は異なります。どうして、その歯を抜かなければいけないのか理由を十分に聞いた上で治療を開始することをおすすめいたします。

矯正装置を入れるとむし歯や歯周病になってしまいませんか?

矯正装置が入ると歯磨きが大変しにくくなりますが、矯正治療が、むし歯や歯周病の直接的な原因になるわけではありません。むし歯のなりやすさは唾液の成分や食生活に影響され、歯周病のなりやすさは、歯肉ポケットの深さや歯を支える骨の吸収の程度、全身状態などによって異なります。矯正治療前にむし歯や歯周病が明らかな場合には、むし歯や歯周病の治療を優先していただく場合があります。

歯磨きが行き届かないうちに装置をつけてしまうと、装置が取れやすくなり治療が進まない、歯肉から血が出てしまう(歯肉炎になる)、ブラケットを外した後にむし歯になっている・・場合があります。そういったことにならないように、矯正治療前または治療中にも、歯磨きの指導を行う場合があります。装置を付けている間は定期的にクリーニングを行うため、歯肉の状態も良くなり歯周組織も改善することがあります。

歯並びを良くすることは、歯磨きをしやすい環境を整えることでもあります。歯並びを直すと同時に歯や歯周組織の健康も向上させるためには、患者さんご自身のホームケアが大変重要です。

矯正装置を入れている期間はどのくらいですか?

矯正治療は、歯の移動の早さ、歯並びの不正の程度、抜歯するかしないか等の治療方針、患者様の協力の程度によって治療期間は異なります。おおよその目安として、通常、抜歯せずに治療した場合には約1~1年6ヶ月、小臼歯2~4本抜歯して治療した場合には約2~2年6ヶ月かかります。難易度の高い症例の場合には、3年程度かかる場合もあります。
なお、小臼歯を抜歯せずに治療を開始した場合でも、抜歯が必要になると判断した場合には、抜歯治療に変更する場合があります。その際には、通常の抜歯治療と同じぐらいの治療期間がかかります。

また矯正治療後には、保定装置を付けて移動した歯を維持します。保定装置を装着する期間は2~3年程度になります。

*ご不明な点は矯正の担当医にご相談ください。